• 2026年10月19日

ビタミンDの話:太陽の光をもう少し生活のなかに

ビタミンDはどのように作られるのか

ビタミンDには、食事から摂取する経路と、皮膚で合成する経路の二つがあります。ほかの多くのビタミンと異なり、私たちの体は太陽光を利用してビタミンDを作ることができるのです。

皮膚でのビタミンD合成

皮膚にはビタミンDの材料となる7-デヒドロコレステロールが存在し、ここに太陽光の紫外線B波(UVB、ビタミンD合成に有効な波長はおもに290〜315 nm)が当たることによって、ビタミンDが作られます。

ビタミンDを多く含む食べ物

ビタミンDが豊富に含まれる代表的な食品は、サケ、サンマ、イワシ、サバなどの魚類です。また、シイタケなどのキノコにもビタミンDが含まれます。特に、キノコに紫外線が当たるとビタミンDが増え、天日干しによって含有量が増えるとされています。卵黄にもビタミンDが含まれますが、一般に魚類と比べると少なめです。

ビタミンDの活性化

ビタミンDは体内で2段階の代謝を受け、活性化されます。まず肝臓で代謝され、25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]となります。次に、主に腎臓で活性型の1,25-ジヒドロキシビタミンD[1,25(OH)₂D]となります。腎臓での活性型ビタミンDの産生は、血中カルシウム濃度や副甲状腺ホルモン(PTH)などによって調節されています。こうしてビタミンDは、血中カルシウム濃度を適切に保つ仕組みの一部を担っています。

くる病とビタミンDの発見

くる病は、骨の石灰化が十分に進まず、脚が弓なりに曲がったり、成長が障害されたりする子どもの病気です。18〜19世紀のヨーロッパ、とくに産業革命期のイギリスでは、子どものくる病が大きな問題になっていました。当時の都市部では、日光が届きにくい住環境や栄養状態の悪さなどが、くる病の増加に関係していました。タラの肝油を与えるとくる病が改善することが知られ、その後の研究によって、肝油に含まれる抗くる病因子としてビタミンDが発見されました。また、紫外線を身体に照射することや、紫外線を当てた食品を食べることでも、くる病が改善することがわかりました。こうした発見によって、日光やビタミンDと骨の健康との関係が明らかになっていったのです。

ビタミンDはどのように作用するのか

ビタミンDは、カルシウムとリンの代謝を調節し、正常な骨の形成と維持を支えます。重要な役割の一つは、腸の細胞に働きかけ、カルシウムの吸収を促進することです。身体のカルシウムの大部分は骨に蓄えられています。骨は常に作られ(骨芽細胞)、壊されています(破骨細胞)。この骨の形成と吸収のバランスによって、骨は維持されています。血中のカルシウム濃度が低下すると、副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌されます。PTHは腎臓でのカルシウムの再吸収を促すとともに、骨吸収を促進して、骨に蓄えられたカルシウムを血中に動員します。また、腎臓での活性型ビタミンDの産生を促し、腸管からのカルシウム吸収を高めます。なぜ、身体はそこまでして血中のカルシウム濃度を一定に保とうとするのでしょうか?それは、カルシウムが骨の材料になるだけでなく、神経の情報伝達、筋肉の収縮、血液凝固、心臓の働きなどにも重要な役割を果たしているからです。

ビタミンDが不足すると、腸管からのカルシウム吸収が低下します。その結果、血中のカルシウム濃度を保つためにPTHの分泌が増え、骨吸収が進みます。ビタミンD不足は、骨の健康を損なう原因の一つなのです。

太陽光を利用してビタミンDを作る理由

ビタミンDに関連する物質や代謝の仕組みは、ヒトが誕生するはるか以前から進化の歴史の中に存在していました。こうした仕組みは、さまざまな生物に見られます。水中では、水の浮力によって体重の一部が支えられます。進化の過程で水から陸に上がった生物は、陸上では重力に逆らって体を支え、移動しなければなりません。脊椎動物では、カルシウムとリンを適切に利用し、骨格を形成・維持する仕組みが重要です。ビタミンDは、こうしたカルシウムやリンの代謝を調節する仕組みの一部を担っています。ビタミンDを多く含む食物は限られ、食物だけで十分な量を確保できるとは限りません。皮膚に当たる紫外線B波(UVB)を利用してビタミンDを合成する仕組みは、食物以外の供給源を確保するうえで有利だったと考えられます。

血中ビタミンD

私は、骨粗鬆症のリスクが高い患者さんを中心に、血中のビタミンD濃度を測定しています。通常、体内のビタミンDの供給状態を評価するために、血中25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]を測定します。日本で用いられる基準では、血中25(OH)Dが20 ng/mL未満をビタミンD欠乏、20 ng/mL以上30 ng/mL未満をビタミンD不足としています。私の診療経験では、20 ng/mL以上の患者さんはまれです。ビタミンD不足は、高齢女性にみられる骨吸収マーカー高値の一因になっています。

太陽の光をもう少し生活のなかに

ビタミンDは、食事から摂取できるだけでなく、私たち自身の皮膚で作ることのできる、特別なビタミンです。人類は長い進化の歴史のなかで、太陽光を利用する仕組みを受け継いできました。しかし、現在、屋内で過ごす時間が長くなったことや、日光を避ける習慣などにより、皮膚でのビタミンD合成が十分ではないようです。紫外線を浴びすぎることは、日焼けや皮膚がんなどのリスクにつながります。しかし、ビタミンDのために、皮膚に害が出るほど紫外線を浴びる必要はありません。骨の健康には、ビタミンDばかりでなく、カルシウム、運動、バランスのよい食事なども大切です。窓ガラスは紫外線B波(UVB)をほとんど通さないため、ガラス越しの日光では、皮膚でのビタミンD合成はあまり期待できません。

まずは、毎日の生活に少しだけでも屋外で過ごす時間を取り入れてみてはいかがでしょうか。

日本人の食事摂取基準(2025年版 厚生労働省) 

AI利用

シモツケソウ(バラ科)(白山 7月)

脳神経まちだクリニック 042-732-6077 ホームページ