• 2023年8月18日
  • 2023年11月9日

グレープフルーツジュースと薬の飲み合わせ どれくらい時間を空ければよいのか?グレープフルーツは?ほかの柑橘類は? 

アムロジピンなどの降圧剤、カルバマゼピンなどのてんかん薬、トリアゾラム(ハルシオン)などの睡眠薬、アトルバスタチンなどの抗血小板薬はCYP3A4という酵素によって代謝されますが、これらの薬剤はグレープフルーツジュースの摂取は控えるように薬局で伝えられています。最近、患者さんから、グレープフルーツを食べた場合はどうなのか?どれくらいの時間を空ければよいのか?ほかの柑橘類は?と質問を受けました。かつて、同様の質問を製薬メーカーの方に質問したことがありましたが、明確な答えは得られず、自分でも調べずにそのままにしておきました。そこで、今回は文献を漁ってみることとしました。

1989年、カナダ、ウェスターンオンタリオ大学のBaileyらは、血管拡張作用のあるエタノールと、同様な作用をもつカルシウム拮抗薬フェロジピンとの薬物相互作用を調べました。その際使用したグレープフルーツジュースがフェロジピンの血中濃度を上げていることを偶然に発見したのでした。その後10年間で、このグループは、薬物とグレープフルーツジュースとの相互作用を明らかにしました。

フェロジピンは、体(血中)に入るときに小腸のCYP3A4という薬物代謝酵素で70%が代謝され、体に入った後には肝臓で15%が代謝されます。グレープフルーツジュースに含まれるフラノクマリンによって小腸のCYP3A4が不可逆的に阻害され、小腸で代謝されずに血中に入るため、薬剤の血中濃度が上がってしまいます(肝臓の酵素活性には変化はありません)。水ではなく、グレープフルーツジュース250mlでフェロジピンを服用すると最高血中濃度が約3倍になってしまいます。グレープフルーツジュースを飲んでから4時間後に薬を飲んでも変化ありませんが、この作用は10時間後で半分に、24時間後に4分の1になります。グレープフルーツの果実、果皮でも同様の結果が得られています(その後の研究で、果皮は果実よりもはるかに多くのフラノクマリンを含むことが分かりました。ジュースは果皮も含めて作られるため、フレッシュな果実を食べた場合はあまり問題とならない可能性があります(十分なエビデンスなし))。また、オレンジジュースではこの作用がないことが明らかとなっています。

薬物とグレープフルーツジュースとの相互作用は、同じCYP3A4で代謝される薬剤でも差があることが分かっています。経口で摂取した場合の生体利用率(バイオアベイラビリテイ 小腸などでの初回通過率)が低い薬剤ほど影響を受けやすく、高い薬剤にはほとんど影響はありません。カルシウム拮抗薬のなかでも、アムロジピンは生体利用率が高く、グレープフルーツジュースの影響を受けにくい薬剤の代表格です(アムロジピンを服用している方は気にする必要はないようです)。抗コレステロール薬では、シンバスタチン、アトルバスタチンは影響を受けやすく、ロスバスタチン、プラバスタチンは受けにくいとされています。このように同種同効薬でも差があるため、自分の服用する薬がどうであるのかを調べて知っておく必要がありそうです。グレープフルーツジュースが好きな方は、前述のように、薬を変更することも可能です。面倒な方は、飲むのを諦めましょう。

グレープフルーツジュースと薬の飲み合わせひとつとっても、サイエンスの奥の深さが分かります。

ごぜんたちばな(仙丈ケ岳中腹 7月)

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