• 2026年7月11日

レカネマブ(レケンビ)継続治療

レカネマブ(レケンビ)が2023年12月13日承認されて、当院ではいち早く最適使用推進ガイドラインに基づいて診療を始めました。髄液検査でアルツハイマー病の診断を行い(希望されない場合はPET検査)、陽性であった場合には認知症疾患医療センター(町田には初期治療を行える施設がないため、総合相模更生病院)に紹介しています。認知症疾患医療センターで6か月の点滴治療の後1年間当院で点滴治療を行っています。

ガイドラインによれば、投与期間は原則18か月です。継続使用も可能となっていますが、私は18か月以降の継続治療は、十分なエビデンスが蓄積されるまでは慎重であるべきと考えます。

1.有効性の検証:レカネマブの継続投与の検討では、18か月まで使用し中止した患者群と、それ以降36か月まで使用した群との比較がありません。また、レカネマブを36か月継続投与した論文には、バイオマーカーに関するデータは後で報告するとありますが、まだ報告されていません(都合のよいデータであれば一刻も早く報告するはず・・・)。一方、同種同効薬であるドナネマブ(ケサンラ)では、アミロイド除去後に治療を終了した患者において、少なくとも3年間は進行抑制効果が維持されることが報告されています。

2.投与方法:18か月まで使用すると、30年かけて溜まったアミロイドβはPETで評価すると大きく減少すること分かっています。アミロイドβの除去にはきわめて有効な薬剤と言えます。18ヶ月までと同様の投与方法(2週間に1回)は再検討が必要です。実際、現在4週間に1回の投与、あるいは自宅での皮下注射薬が検討されています。

3.継続投与期間:現行の最適使用推進ガイドラインでは18か月を超えて継続投与する場合の投与終了時期は明確には定められていません。どこまで使用するのが有効か十分なエビデンスがありません。症状を和らげたり治したりする薬ではなく、継続して使用し症状が中等度以上に悪化すれば適応外となります。何らかの明確な基準が求められます。

4.バイオマーカー:同種同効薬であるドナネマブは、アミロイドPETというバイオマーカーを指標にできます。投与1年後のアミロイドPETでアミロイドβが陰性の場合はそこで中止することになっています。レカネマブはプロトフィブリルに対する抗体薬ですが、プロトフィブリルのバイオマーカーはなく、アミロイドβも(保険診療では)指標としない方針となっています。バイオマーカーでアルツハイマー病を診断する今日、何らかの指標が求められます。

5.費用対効果:レカネマブは非常に高額な薬剤です。薬価が引き下げられたとは言え、費用は年間数百万円に及びます。このような高額な薬に対して、使用期間に対する十分なエビデンスなく継続することには疑問を抱きます。

6.リン酸化タウ・脳血管関門:アルツハイマー病において、神経細胞障害との関連はリン酸化タウの方が強いことが知られており、抗アミロイドβ抗体薬の効果は限定的と考えられます。また、脳血管関門があるために、静脈注射した抗体薬のうちごく一部しか脳内へ到達しないことが分かっています。より効率的なdrug delivery systemの開発も期待されます。

7.患者・病院負担:投与終了時期が明確でないまま2週間に1回点滴を行うことは患者さんにとっても病院にとっても大きな負担です。

レカネマブはアルツハイマー病の進行を遅らせる画期的な治療薬ですが、18か月以降の継続治療については、有効性、最適な投与間隔、投与終了時期、バイオマーカーによる評価など、なお解決すべき課題が残されています。今後これらの課題に関する十分なエビデンスが蓄積され、それに基づいた治療指針が確立されることが望まれます。

一方で、アルツハイマー病は生活習慣を改善することで予防可能であることがわかってきています。例えば、毎日歩くことでアミロイドβは変化しないけれども、リン酸化タウの蓄積を遅延させ、認知機能の悪化を低下させたという研究もあります。当院では、生活習慣の改善を促してできる限り病状が進行しないように努めています。

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