• 2023年9月11日

顔の痛みについて:三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、群発頭痛、その他。

当院では「三叉神経痛(顔の痛み)外来」を行っています。三叉神経とは、顔面の知覚を支配する神経で、三叉というように、第1枝(眼神経)、第2枝(上顎神経)、第3枝(下顎神経)に別れています。また、右の神経は顔右半分、左の神経は左半分と厳密に分かれます。第1枝の支配はおでこから鼻にかけて、第二枝は主に頬、第3枝は下顎か側頭部です。

私はこれまで三叉神経痛の手術を行ってきました。三叉神経痛と診断された患者さんの紹介を受けるのですが、そのなかに三叉神経痛以外の病気も含まれていました。医師でも診断が難しいため、そのうちに顔の痛みが専門と自認するようになりました。三叉神経痛とは、一側の三叉神経の支配領域に一致して繰り返しおこる短時間の劇痛(数分の1秒~2分)で、食事中や、顔を洗ったり、歯を磨いたりする動作で誘発される特徴があります。脳腫瘍などが原因となることもありますが、多くは頭蓋内で、脳血管が三叉神経の根元に当たることによっておきます。手術はこの血管が神経に当たらないように移動します。舌咽神経痛や中間神経痛など鑑別すべき疾患は多く、難渋することもあります。カルバマゼピンで症状が軽快するのが特徴と言えます。

帯状疱疹後の神経痛では、持続する焼けつくような痛みとかゆみがあり、患者さんを苦しめます。第2枝第3枝に多い三叉神経痛とは異なって第1枝に多いのが特徴です。群発頭痛を代表とする三叉神経・自律神経性頭痛は、片側の眼の周囲の痛みで、同じ側に結膜充血・流涙・鼻閉・鼻漏・眼瞼浮腫・発汗などを伴いますが、本人は痛みが強くて気が付かないこともあります。その他、歯科疾患、副鼻腔炎などの耳鼻科疾患、緑内障などの眼科疾患、顔面外傷によるものなど、原因は多岐にわたります。

顔の痛みで最も多いのはストレスなどの心因性であることはあまり知られていません(あくまで個人的見解)。私がまだ医師になりたてのころ、ある看護師さんから、顔が痛いと相談を受け、脳腫瘍を疑って、頭のMRIを撮りましたが異常はありません。原因がわからず不思議でならなかったのを覚えています。

50歳代の男性を経験したことで、心因性の痛みがあることを知りました。約1か月前から顔面に激痛が走るというのですが、神経支配に一致する痛みではありません。よくよく話を聞くと、痛みが始まったちょうどそのころから、妻とけんかして全く口をきいていない言います。それが原因の可能性があると指摘しますと、しばらくして症状がなくなったと連絡がありました。精神的なストレスから、顔の痛みという明確な症状をきたした例と言えます。原因が明らかでないこともあります。多くの場合、抗うつ剤を使用することで症状を和らげることができます。

たかねまつむしそう(兎岳付近 8月)

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