• 2024年6月17日

運動によって骨から遊離するホルモン、オステオカルシンosteocalcinが脳に与える影響

骨は体重の6~7分の1を占め、身体の維持・運動を支え、保護する臓器です。骨はこれ以外にも内分泌器官であることが明らかとなっています。その中でもオステオカルシンは、糖・エネルギー代謝、生殖機能、脳の発育・発達の調整、認知機能、気分の安定化に重要な役割を果たしていることが次々に明らかとなってきています。オステオカルシンは、49個のアミノ酸からなる分子量約5500のペプチドで、骨芽細胞で合成されます。3つのグルタミン酸残基がビタミンK依存的にγカルボキシル化され、それによってカルシウムに対する親和性が大きく亢進してヒドロキシアパタイトと強固に結合し骨に埋め込まれ骨の基質を構成します。一部が血中に放出され、ホルモンとして機能します。多くはまだ研究段階ではありますが、年齢による認知機能の悪化を抑制し、学習、記憶、高次機能の改善に関係します。加齢に伴って骨密度が下がり、その結果、オステオカルシンの分泌量が減ることが、記憶の衰えが生じる一因であると考えられます。運動で骨密度を維持すれば、骨が分泌するオステオカルシンによって加齢に伴う記憶の衰えが緩和されると期待できます。また、脳血管関門を通過して、神経伝達物質(セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンなど)の産生を促します。うつ病などの治療に運動療法が有効な根拠として考えられ、またその治療としてオステオカルシンは注目されています。

まずは、歩くことから始めましょう。

参考

エリック・カンデル著(大岩(須田)ゆり訳 須田年生医学監修):脳科学で解く心の病 築地書館 2024

Gerosa L, Lombardi G. Bone-to-Brain: A Round Trip in the Adaptation to Mechanical Stimuli. Front Physiol. 2021 Apr 28;12:623893. doi: 10.3389/fphys.2021.623893. PMID: 33995117; PMCID: PMC8120436.

Ren J, Xiao H. Exercise for Mental Well-Being: Exploring Neurobiological Advances and Intervention Effects in Depression. Life (Basel). 2023 Jul 4;13(7):1505. doi: 10.3390/life13071505. PMID: 37511879; PMCID: PMC10381534.

たかねこうりんか(甲斐駒ヶ岳 7月)

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