• 2024年1月22日
  • 2024年1月25日

新しい認知症治療薬レカネマブ(レケンビ):対象患者・投与施設・方法・有効性・副作用

軽症のアルツハイマー型認知症に使用できるレカネマブに関してまとめてみます(分かりやすくおおまかに記載したところもあります)。

① 使用できる認知症患者

・本人および家族・介護者の治療意思がある方(副作用であるARIAを理解し、2週間に1回の点滴に18か月通院でき、費用負担できる*)*70歳以上の方は外来でも高額医療制度が利用できます(年収370万円以下の一般ではひと月の上限額は18000円、住民税非課税世帯では8000円です。くわしくは、ご自身が加入している公的医療保険に問い合わせてください)

・認知症の症状が軽度(MMSEスコア22点以上 CDRスコア0.5または1)年齢に制限はありません

・アルツハイマー型認知症であることが証明(アミロイドPETまたは髄液検査により承認を受けた方法で確認)

・頭MRIで脳浮腫や出血がない(微小出血はあっても5個未満、副作用(ARIA)が起こりやすいため)

・慎重投与患者:一過性脳虚血発作、脳卒中、痙攣の既往・高血圧が持続する患者

② 治療できる医療施設

・基準を満たした病院(認知症疾患医療センターか、連携をとれる施設)

・治療開始6か月以降は、(副作用であるARIAのリスクが低くなるため)、基準を満たした診療所でも可能(当院でも治療可能です)

③ 使用方法

レカネマブ10mg/kg(200mg/2mlまたは500mg/5mlバイアル)を250mlの生理食塩水に溶解し約1時間かけて点滴静脈投与

④ 有効性

国際共同第III相試験では、CDR-SB(記憶、見当識、判断力問題解決、地域社会活動、家庭生活および趣味・関心、介護状況の6項目を0、0.5、1、2、3点で評価した合計点)では、プラセボ群では治療前平均3.22±1.34から投与18か月後に平均4.64±2.70に悪化したのに対し、投与群では3.17±1.34から4.22±2.49でした。有意な悪化抑制効果(27.1%抑制、p<0.0001)を認めました(症状は改善するわけではありません)。また、アミロイドPETにおけるアミロイドβは、プラセボ群では変化しないのに対し、投与群では60%近く減少を示しました。

⑤ 副作用 アミロイド関連画像異常(ARIA, amyloid-related imaging abnormalities)

アミロイドβが関与して起こる特徴的なMRI所見で、脳浮腫と出血があります。発現率は、国際共同第III相試験において約20%で、約4%の患者さんに症状(頭痛、錯乱、視覚障害、めまい、吐き気、歩行障害、けいれん、てんかんなど)が現れました。このため、投与後2か月、3か月、6か月を目安にMRIのモニタリングを行うこととなっています。MRIで中等度以上のARIAが出現した場合あるいは症候性となった場合には治療を中断します。改善した場合には再開できます。

⑥ 静脈投与反応 

頭痛、悪寒、発熱、吐き気、嘔吐などの症状が現れることがあります。初回に約20%出現し、次週以降は減少します。

⑦ 薬価

200mg 4万5777円、500mg 11万4443円 (体重50kgの方では、薬価のみで月に約23万円かかり、自己負担額(3割として)は約7万円となります。高額医療制度に関しては①参照)

きんろばい(北岳 北岳山荘付近 8月)

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