• 2023年12月19日

コレステロールが高い方へ。コレステロールはなぜ悪者なのか?

コレステロールの薬を服用されている方も多いかと思いますが、コレステロールは何であるのかをご存じない方も多いようです。そこで今回はコレステロールの概要を解説します。

コレステロールは生体にとって必須なためコレステロールを保持する機能が備わっている

コレステロールは細胞膜を構成し、その機能に関与しています。また、ステロイドホルモンやビタミンなど様々な生理活性物質の前駆体となっています。精巣ではアンドロゲン、卵巣ではエストロゲン、プロゲステロン、副腎ではグルココルチコイド、ミネラルコルチコイドが作られます。コレステロールは主に肝臓で作られ全身の細胞に供給され利用されます。食事から摂取したコレステロールも小腸から吸収され肝臓に運ばれます。コレステロールは生体内で分解されません。肝臓から胆汁酸として腸管に排泄されますが、大部分は小腸大腸で再吸収されます(腸管循環)。コレステロールは体に必須の脂質であるため、分解されず保持する機能が複数備わっています。飢餓との闘いであった人類の歴史からみると合理的であったわけですが、現代においては不利益をもたらしているとも言えます。

動脈硬化の主要な原因と最も重要な指標はLDLコレステロール

動脈硬化は、コレステロールの血管壁への異常な蓄積が原因とされています。LDLコレステロールが血管に蓄積すると炎症が引き起こされて白血球が集まります。コレステロールはマクロファージとなった白血球が貪食し、集まることによって炎症が進行します。マクロファージが集まって粥腫を形成し、プラークと呼ばれる沈着物が形成されていきます。これにより、血管の内側が厚くなり、内腔が狭くなります。血液の流れが阻害され、最終的にはプラークが割れたり裂けたりして、血栓が形成され血管が閉塞することになります。動脈硬化は複雑なプロセスであり、他にも高血圧、喫煙、糖尿病などが関与します。

以上のようにコレステロールは動脈硬化の主因であると同時に、血中LDLコレステロールが動脈硬化の最も重要なマーカーであることは、これまでの長年の研究によって明らかとされています。

コレステロールは7割が体内で産生される                          

食事から一日平均数100mgを摂取し約半分が吸収されますが、7割は体内、多くは肝臓で産生されています。脂質がどのように体に配分されるかですが、まず、カイロミクロンは小腸の上皮細胞によって作られ、消化管から吸収されたコレステロールを含む脂溶性物質の多くを輸送し、脂肪細胞や筋細胞に、残りの多くは肝臓に取り込まれます。VLDLは肝臓で生合成された中性脂肪を輸送するのが主な役割です。このVLDLが末梢組織で中性脂肪を渡していく過程で産生されるのがLDLで、肝臓で生成されたコレステロールを末梢組織に輸送するのを主な役割としています。LDLは、その受容体を持つ細胞に取り込まれ、細胞はコレステロールを受け取り利用します。過剰なコレステロールは分解されないため、HDLに引き抜かれるか、そこに留まる(沈着する)しかありません。HDLは末梢から余剰なコレステロールを除去・回収することを主な役割としています。LDLは動脈硬化性疾患のリスクとなるため、「悪玉コレステロール」、HDLはリスク軽減につながることから「善玉コレステロール」と呼ばれています。

名称略称比重主な由来主な役割
カイロミクロンCM<0.95小腸食餌性脂肪の輸送
超低密度リポタンパクVLDL0.95-1.006肝・小腸肝臓由来脂肪の輸送
低密度リポタンパクLDL1.019-1.063VLDL肝臓由来コレステロールの輸送
高密度リポタンパクHDL1.063-1.210末梢の余剰コレステロールの輸送

表 脂質の移動を担う4種類のリポタンパク 脂質代謝が特殊であるのは、脂質の持つ難溶性に由来しています。生体はリポタンパクによって水に溶けない物質(脂質)を水で満たされた生体内で巧みに分解・合成・貯蔵・移動を行っています。リポタンパクは小腸と肝臓でのみ産生され、比重の違いによって表のように分類されています。

コレステロールの救世主スタチンの作用と発見の経緯 

コレステロールは主に肝臓で複雑な過程を経て合成されます(コンラート・ブロッホとフェオドル・リュネンが1964年のノーベル生理学・医学賞受賞)。その合成反応を最も制御している(律速段階)のはHMG-CoA還元酵素で、肝臓の細胞内コレステロールが低下するとセンサーが感知してHMG-CoA還元酵素の発現を増加させ、細胞内でのコレステロールの合成を促進します。それと同時にLDL受容体の発現も増加させ、血中からのLDLの回収を促進し、コレステロールを増やそうとします。スタチンはHMG-CoA還元酵素の阻害薬であり、コレステロールの合成を阻害します。

三共(製薬会社)の社員だった遠藤章は、コレステロール低下薬の開発に興味を持ち、HMG-CoA還元酵素を阻害する抗生物質をつくる微生物がいるはずだとの仮説をたてました。2年間でコレステロール合成に6000株のカビやキノコの培養液を加えて1973年7月に青カビからコンパクチンを発見しました。その後の商業化の競争でメルク(製薬会社)のロバスタチンに先は越されたものの、(遠藤が会社を去った後)三共もプラバスタチンの商業化に成功しました。

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