- 2025年6月6日
中性脂肪と脂肪酸のはなし2 健康のためにはどうすればよいか?
中性脂肪:中性脂肪(=triglyceride)は口から摂取する脂肪の大部分を占め、エネルギーの供給と貯蔵を担っています。中性脂肪は グリセロール(グリセリン) という物質に 脂肪酸 が3つ結合した構造を持っています。グリセロール + 3つの脂肪酸 = 中性脂肪 という関係です。これによって化学的に安定した状態になります。
脂肪酸:脂肪酸には健康によい不飽和脂肪酸と摂りすぎると動脈硬化のリスクとなるそれ以外の脂肪酸に分けられます。
不飽和脂肪酸:炭素鎖に1つ以上の二重結合を持つ脂肪酸。常温で液体のものが多く、植物油や魚の脂に多く含まれます。酸化しにくく、健康に良いとされています。以下のものがあります。
オレイン酸(オリーブオイル、キャノーラ油、アボカド)
ω(オメガ)-6系脂肪酸としてリノール酸(大豆油、コーン油)、アラキドン酸(肉類、卵黄)
ω(オメガ)-3系脂肪酸としてα-リノレン酸(エゴマ油、亜麻仁油)EPA(エイコサペンタエン酸 サバ、イワシ) DHA(ドコサヘキサエン酸 マグロ、サーモン)があります。
不飽和脂肪酸以外の脂肪酸
飽和脂肪酸:炭素鎖に二重結合がなく、直鎖状の構造を持つ脂肪酸。常温で固体のものが多く、動物性脂肪や一部の植物油に多く含まれ、一般的に取りすぎると動脈硬化の原因になるとされています。パルミチン酸(バター、ラード、パーム油)ステアリン酸(牛脂、カカオバター)ミリスチン酸(ココナッツオイル、バター)などがあります。
トランス脂肪酸:天然には少なく、加工食品に多く含まれます。水素添加による部分硬化油や、マーガリン・ショートニングに含まれます。過剰摂取は健康リスクが高いとされています。
中性脂肪はどのように吸収され産生され運ばれ貯蔵されるか?そして利用されるか?
食餌中の中性脂肪は十二指腸に分泌されている胆汁によってミセル形成され(水に溶けやすくなる)リパーゼによって分解されます。小腸上皮細胞に吸収された後、中性脂肪が再合成され、コレステロールなどと一緒にカイロミクロンが形成されリンパ管から血中に放出され組織まで運ばれます。中性脂肪は、摂取カロリーが消費を上回ったときは肝臓でも作られVLDLとして運ばれます(自分で作ることのできない脂肪酸もあり、必須脂肪酸と呼ばれます。リノール酸(ω-6)とα-リノレン酸(ω-3)は食事から必ず摂取する必要があります。健康に良いとされるEPAやDPAも体内で産生されていますが、効率が悪く、魚などから直接とるのが効果的とされています)。運ばれた中性脂肪は脂肪組織に蓄えられます。血中の中性脂肪は、リポタンパクであるカイロミクロンとVLDL内のものを主に測定しています。
一方、蓄積された脂肪組織の中性脂肪は、エネルギー源として他の組織(筋肉、心臓、肝臓など)へ供給されます。飢餓時や運動時などエネルギー需要が高まったときに、脂肪組織から動員されます。脂肪組織の中性脂肪は分解され、遊離脂肪酸となり、血液中で豊富に存在するアルブミンと結合して水溶性を確保します。血液中を移動してターゲットの組織に到達すると、アルブミンから解離し、細胞内に取り込まれてエネルギー源として利用されます。
名称 | 略称 | 比重 | 主な由来 | 主な役割 |
カイロミクロン | CM | <0.95 | 小腸 | 食餌性脂肪の輸送 |
超低密度リポタンパク | VLDL | 0.95-1.006 | 肝・小腸 | 肝臓由来脂肪の輸送 |
低密度リポタンパク | LDL | 1.019-1.063 | VLDL | 肝臓由来コレステロールの輸送 |
高密度リポタンパク | HDL | 1.063-1.210 | 肝 | 末梢の余剰コレステロールの輸送 |
リポタンパクの種類:リポタンパクは水に溶けない脂質を蛋白質で包み込み血液で運びやすくします。
血中中性脂肪が高いとどうなるか?
LDL(悪玉コレステロール)は、心血管疾患に対するリスク因子としての関連が非常に強いことが広く知られており、多くの研究でその関係が示されています。例えば、LDLコレステロール値が高いと、アテローム性動脈硬化(動脈内にコレステロールが蓄積する病気)を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中のリスクを大幅に増加させることが証明されています。このため、LDLの管理が心血管疾患の予防において最も重要視されています。
一方、高中性脂肪血症に関しては、LDLほどの強い因果関係は確立されていないものの、心血管疾患や糖尿病のリスク因子としては十分に重要視されています。特に、高中性脂肪と低HDLの組み合わせ(いわゆるアテローム型脂質異常症)が心血管疾患のリスクを高めることが複数の研究で示されています。
食後2~4時間で血中の中性脂肪はピークに達します。食事に含まれていた中性脂肪がカイロミクロンとして血中に放出されるためです。そのため、食後も血中中性脂肪はかなり高い場合があります。これまでは空腹時中性脂肪が150mg/dL以上を高中性脂肪血症と定義されてきました。最近では、非空腹時の高中性脂肪血症が心血管疾患のリスクが高くすることが示され、随時の検査で175mg/dLで高中性脂肪血症とされます。
健康のためにはどうすればよいか?
脂ものの摂りすぎは避け(やめる必要はない)、魚や豆類、オリーブオイルなどの不飽和脂肪酸を含む食事をし、カロリーを摂りすぎず、適度な運動を行うことが、脂肪という観点からみた健康法と言えます。
AIを使用して作成しています

こみやまかたばみ(大菩薩嶺 6月)