• 2023年11月6日

高血圧は何故放置しておいてはいけないのか?知らない間に体を蝕むsilent killer

10月29日は「世界脳卒中デー」でした。これにあわせて、全国で50以上の建物が活動のシンボルカラーにちなんだ藍色にライトアップされたとのことです。国内で年間10万人以上が脳卒中で亡くなっています。国の統計では、脳卒中は死因の第4位ではありますが、寝たきりの原因としては最大です。そして、高血圧は脳卒中を発症する最も重要な要因です。

私はこれまでたくさんの脳卒中患者さんを診療してきました。高血圧を放置して脳卒中をおこし、寝たきりや、不自由な生活を強いられる患者さんをたくさん診てきました。開業にいたった理由の一つがここにあります。脳卒中にならないよう血圧などのリスクを軽減し、正しい生活習慣を身に着けてもらいたいと思ったからです。

症状もないのに、高血圧で薬を飲んだほうがよいと言われてもピンとこない方が多いと思います。血圧の治療が、最初は真剣であったのに、だんだんと適当になってしまう方もおられます。自己流の管理はよくないと説明してもわかってもらえない方もおられます。高血圧は知らない間に体を蝕むsilent killerと呼ばれています。痛い目に合わないと気付かないのが人間の性かも知れませんが、高血圧の診断・治療に関しては、私自身の経験のみではなく、長年にわたる各分野での多くの研究成果(科学的根拠)によって成り立っています。

血圧を高いまま放置すると、動脈硬化が進行します。若い時は、いろいろな要因によって循環血液量・心拍出量が増えることによって高血圧がおこると考えられています(拡張期血圧の上昇)。細い血管の弾力が失われ、血管が肥厚して内腔が狭くなります。そのため末梢血管抵抗が増して代償的に血圧が上昇します(悪循環が発生)。動脈硬化は大血管にもおよび、年をとるにつれて、収縮期血圧の上昇が優位となり、拡張期血圧は下がってきます。

高血圧は、脳卒中のなかでは特に脳の実質を通る細い穿通枝が詰まるラクナ梗塞、そこからの脳出血、大脳白質病変と呼ばれる病態に関係しています。脳動脈の狭窄や閉塞による脳梗塞、脳動脈瘤によるくも膜下出血、頸部内頚動脈の硬化性プラークによる脳梗塞、さらには血管性認知症も高血圧がリスクとなっています。脳以外では、心疾患(左室肥大・心房細動・狭心症・心筋梗塞・心不全)、慢性腎臓病、閉塞性動脈硬化症、解離性大動脈瘤、眼底疾患などの原因となります。40歳から80歳代のどの年齢階級でも、血圧上昇とともに全死亡リスクが増えます。また、全死亡の約20%が高血圧によって発生すると推定されています。

現代では、多くの方が健康診断をうけ、血圧を測定します。血圧が高いと指摘された方は、是非ともお近くの診療所を受診することを勧めます(次回は、高血圧の管理方法について記します)。

こばのこごめぐさ(北岳肩の小屋付近 8月)

 

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