• 2026年4月9日

乳児の頭部外傷 どのような時に注意すべきか:私たちの検討から

初めての子育てで、赤ちゃんを誤ってうっかり落としたり、あるいは、見ていないすきに落っこちたり、子育てには苦労はつきません。気も動転して連れてこられる若いお父さんお母さんが結構おられます。どのような時は危ないのか、私たちの研究からわかったことをここに記したいと思います。

小児の頭部外傷において、乳児は年長児と比較して頭蓋内病変(外傷性脳損傷)のリスクが高いとされています。CTを撮れば診断は可能ですが、できれば被ばくさせたくはありません。MRIは、薬を使用して眠らせない限り、動いてしまって撮像が困難です。児によっては、よく吐いたり、ぐずったりしますので、症状だけからは診断が難しく、乳児の頭部外傷は脳神経外科医にとっても難しい疾患と言えます。

私たちは8年間に549人の乳児の頭部外傷の受診を受け、研究の対象としました。この内15人(3%)に頭蓋内病変を認めました。受傷機転は転落が最も多く357人で、そのほか、打撲112人、階段からの転落43人、虐待(疑い)3人を含みました。60cm以上の高さから落ちた98人中8人に頭蓋内病変を認めました。30cm以上の167人中1人に頭蓋内病変を認め、それ以下では誰も認めませんでした。6cm以上の皮下血腫の2人中1人、3cm以上の皮下血腫では35人中10人、以下では121人中2人に頭蓋内病変を認めました。皮下血種の部位では、側頭部28人中9人、頭頂部15人中2人、後頭部22人中2人に頭蓋内病変を認めましたが、前頭部の98人にはありませんでした。一方、嘔吐や機嫌の悪さは病変とは関係ありませんでした。頭蓋内病変のある15人のうち1人のみ手術になりましたが(虐待例)、この児も含み15人全員完全に回復しました。

以上から、症状では頭蓋内病変を診断することは難しく、高いところからの転落、大きな皮下血腫、前頭部以外の皮下血腫の際には頭蓋内病変のリスクが高いことが分かりました。

乳児の頭部外傷は転落が65%を占めました。比較的高いところからでは、だっこやおんぶからの転落、お風呂の受けわたしなどの転落などがあり得ます。注意が必要です。

なお、虐待を疑う場合にはCTは必須と言えます。

Ohbuchi H, Hagiwara S, Hirota K, Koseki H, Kuroi Y, Arai N, Kasuya H. Clinical Predictors of Intracranial Injuries in Infants with Minor Head Trauma. World Neurosurg. 2017 Feb;98:479-483. doi: 10.1016/j.wneu.2016.11.045. Epub 2016 Nov 19. PMID: 27876657.

はなねこのめそう(高尾山 3月)

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