• 2024年10月22日

睡眠時無呼吸症候群:定義・原因・診断・脳神経疾患との関連・治療

無呼吸・低呼吸とは

睡眠中の10秒以上持続する気流停止を無呼吸と定義し、10秒以上持続する30%以上の気流の低下で、3%以上の酸素飽和度低下あるいは覚醒反応を伴う場合を低呼吸と呼びます。

睡眠時無呼吸症候群(SAS sleep apnea syndrome)とは

睡眠中1時間(平均)に無呼吸低呼吸が起こる回数を無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index,AHI)と呼び,AHIが5回以上で日中の過度の眠気などがある場合や高血圧・糖尿病・冠動脈疾患などを伴う場合に睡眠時無呼吸症候群と呼びます(通常は閉塞性を指しますが、ほかに中枢性などがあります)。AHI 5~14回が軽症、15~29回が中等症、 30回以上が重症とされています。AHI>15の有病率は50歳代女性で10%弱、男性で10~20%との報告があります。肥満・加齢・男性・飲酒・顎の形(小顎)が発症関連要因として知られています。

なぜ起こるか?

吸気時に気道が陰圧となる時、通常オトガイ舌筋などの気道開大筋群が気道を前に引っ張って上気道がさらに狭くならないようにしています。睡眠時には、この筋の働きが弱くなりますが、睡眠時無呼吸症候群では、肥満・加齢などの他の要因が加わって上気道が狭くなり閉塞すると考えられています(そのため、オトガイ舌筋を支配する舌下神経刺激による睡眠時無呼吸症候群の治療方法が開発されました)。

何が問題か?

まず、自覚症状として、日中の過度の眠気、睡眠中の窒息感や目覚めることや喘ぎ呼吸、不眠などが挙げられます。重要な併存症として心不全、心房細動、循環器疾患(心筋梗塞・脳卒中)があります。そのほか、糖尿病、高血圧、交通事故などがあります。

脳神経疾患との関連

無呼吸・低呼吸では低酸素血症となるために、多くの脳神経疾患との関連が指摘されています:てんかん、パーキンソン病、認知症、頭痛、うつなどです。

検査方法

睡眠ポリグラフ検査がスタンダードとなっています。簡易モニターを用いて在宅で行うことも可能です。睡眠中の無呼吸、低呼吸の頻度を気流の変化、酸素飽和度で診断します。

治療方法

CPAP(持続陽圧呼吸 continuous airway pressure)治療、OA(oral appliance 口腔内装置、マウスピース)療法や減量(肥満を伴う場合)、気道開存手術などがあります。なかでもCPAP療法が標準的な治療となっています。一日4時間以上の使用日数が使用日の70%以上が有用と考えられています。AHIの目標は正常範囲内の5回未満で、少なくとも10回未満です。この基準を満たす割合は4割程度とも言われています。アレルギー性鼻炎では継続困難な例が多く対策が必要です。軽~中等症や、CPAP治療が継続できない症例ではOA療法が勧められます。また、仰向きの体位で無呼吸低呼吸が多いため、横向きで寝ることで改善の余地があります。

参考文献

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020

CPAP 日医会誌109:1073-1081, 2020

Goyal M, Mishra P, Jaseja H. Obstructive sleep apnea and epilepsy: understanding the pathophysiology of the comorbidity. Int J Physiol Pathophysiol Pharmacol. 2023 Aug 15;15(4):105-114. PMID: 37736503; PMCID: PMC10509561.

Guay-Gagnon M, Vat S, Forget MF, Tremblay-Gravel M, Ducharme S, Nguyen QD, Desmarais P. Sleep apnea and the risk of dementia: A systematic review and meta-analysis. J Sleep Res. 2022 Oct;31(5):e13589. doi: 10.1111/jsr.13589. Epub 2022 Apr 2. PMID: 35366021.

やぶきじゃこうそう(千枚岳付近 8月)

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