• 2026年3月10日

体内時計の働き:睡眠と活動モード

睡眠中には体も睡眠モードとなり日中とは異なる働きをします。目を覚ませば、脳も体も活動モードに切り替わらなくてはなりません。このリズムを調整しているのが、脳の視交叉上核(SCN)にある体内時計(親時計)で、これを起動させるのが光です。

光のないところで暮らした場合には、体内時計の周期は平均24.18時間になっています。人によっても異なり、24時間以内の人は朝型となり、24時間以上だと夜型になる傾向にあります。年齢によっても変化し、子供は朝型で、思春期に夜型となり高齢者は朝型となります。思春期に朝起きられない理由のひとつにこの生理的な現象があるようです。

網膜にあるメラノプシンが波長の短い青色の光(ブルーライト)を感知すると、その情報は視神経のすぐそばのSCNに届きます。すると、SCN内で時計遺伝子が急速に発現し、その下流にある多くの関連する遺伝子に伝わります。そうして、日中の活動モードに入ります。松果体から分泌されるメラトニン(睡眠ホルモン)を抑制し、覚醒ホルモンであるオレキシンが分泌され、コルチゾールの分泌を促し、交感神経が働き、体温が上昇します。日中高くなるコルチゾールは、エネルギー(糖)を脂肪や筋から誘導し、頭をすっきりさせ、ストレスにも対応できるようにします。大脳や心臓、血管、腎臓、肝臓、すい臓などほとんどの臓器にも体内時計(子時計)があって脳と同期して活動を支えます(図はAllada Rらの論文から)。

朝、太陽光を浴びることの大切さがここにあります。一方、寝る前にスマホやテレビを見たり、電気をつけて寝ることは良いことではありません。最近のスマホにはブルーライトを抑える機能がついていますが(iPhoneではnight shift)、完全にブロックはできません。

朝食を食べることが重要であることは栄養学的には明らかにされています。動物実験では、肝臓などの臓器の時計遺伝子(小時計)は朝食を抜くことで遅れることがわかっています。体内時計の観点からも、朝食をとることによって、光による刺激と連動して日中の活動モードに効率的に入れる可能性があります。反対に、寝る直前に食事をすることがよくない理由のひとつがここにあるのかも知れません。

かつての私も当直や夜間の手術を行っていましたが、夜間に仕事をする(shift worker)と体内時計と不一致が起こります。体内時計のリズムが狂うことによって、脳神経疾患、精神疾患、がん、心臓疾患、感染症、糖尿病などの病気にかかりやすくなることが分かってきています。では、shift workerはどのようにすればよいのでしょうか?多くの研究が行われていますが、結論を出すには程遠い段階のようです。

一般の人は、毎朝早めに起きてカーテンを開け、朝食を食べ、規則正しい生活をすることが健康を保つ秘訣と言えるでしょう。

柳沢正史 睡眠の超基本 朝日新聞出版

Allada R, Bass J. Circadian Mechanisms in Medicine. N Engl J Med. 2021 Feb 11;384(6):550-561. doi: 10.1056/NEJMra1802337. PMID: 33567194; PMCID: PMC8108270.

Ogata H, Horie M, Kayaba M, Tanaka Y, Ando A, Park I, Zhang S, Yajima K, Shoda JI, Omi N, Kaneko M, Kiyono K, Satoh M, Tokuyama K. Skipping Breakfast for 6 Days Delayed the Circadian Rhythm of the Body Temperature without Altering Clock Gene Expression in Human Leukocytes. Nutrients. 2020 Sep 12;12(9):2797. doi: 10.3390/nu12092797. PMID: 32932677; PMCID: PMC7551061.

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