- 2026年1月10日
新しい高コレステロール治療薬が使用できるようになりました:ベムぺド酸(ネクセトール)はスタチンの効果が十分でない方や副作用のある方に有効です
コレステロールの血管壁への異常な蓄積が動脈硬化の主原因とされています。LDLコレステロールが血管に蓄積すると炎症が引き起こされて白血球が集まります。マクロファージとなった白血球がコレステロールを貪食し粥腫を形成し、プラークと呼ばれる沈着物が形成されていきます。これにより、血管の内腔が狭くなり、血液の流れが阻害され、最終的にはプラークが割れたり裂けたりして、血栓が形成され血管が閉塞することになります。
このコレステロールは主に肝臓で複雑な過程を経て合成されますが、この合成反応を最も制御している(律速段階)のはHMG-CoA還元酵素で、スタチンはHMG-CoA還元酵素の阻害薬であり、コレステロールの合成阻害薬のスタンダードできわめて有用な薬です。ガイドラインによれば、LDLのコントロール範囲は、家族性高コレステロール血症、心筋梗塞、糖尿病では70mg/dL以下、二次予防では100mg/dL以下、高リスク120mg/dL以下、中リスク140mg/dL以下、低リスク160mg/dL以下とされています(75歳以上の高齢者は除く)。スタチンはLDLコレステロールを30~50%以上低下させる効果があります。スタチンは筋肉にも作用するため、まれに筋肉痛や筋肉に違和感がでる場合があります。筋肉細胞が破壊されたときに血中に現れるCPKを測定することである程度判断できます。また、横紋筋融解症という重篤な合併症もあります。
ベムペド酸(ネクセトール 大塚製薬)はスタチンが働く場所よりも上流のATPクエン酸リアーゼ (ACL) を阻害することでLDLコレステロールを 15〜25%低下させます。この薬剤の特徴は、筋肉には活性化させる酵素がないために、筋肉には作用しない点にあります。スタチンに見られる筋肉の副作用は起こりません。一方、ベムペド酸の代謝産物は、腎臓で尿酸を排泄するために働くトランスポーターと同じ経路で排泄されるために競合し、尿酸の排泄を阻害します。尿酸値の高い人には注意が必要です。ベムぺト酸(ネクセトール)はスタチンの効果が十分でない方や副作用のある方に有効です。
2230名が参加した無作為化対照試験の結果を紹介します。最大耐用量のスタチンによる治療を受けている患者さんで、LDLコレステロールが70mg以上ある動脈硬化性心血管疾患、ヘテロ接合体家族性高コレステロール血症を有する患者を対象としています。患者は2対1の割合でベムペド酸またはプラセボを受けるよう無作為に割り付けられました。主要評価項目は安全性であり、主たる副次評価項目(主要有効性評価項目)は52週間中の12週目におけるLDLコレステロール値の百分率変化としました。その結果、1488名がベムペド酸群、742名がプラセボ群に割り付けられました。ベースライン時の平均(±標準偏差)LDLコレステロール値は103.2±29.4 mg/dLでした。介入期間中の有害事象発生率は、ベムペド酸群で1487例中1167例(78.5%)、プラセボ群で742例中584例(78.7%)と、両群で大きな差は認められませんでした。しかし、レジメン中止に至った有害事象の発生率はベムペド酸群で高く(162例vs 53例)、痛風の発生率もベムペド酸群で高い結果となりました(18例vs 2例)。12週目において、ベムペド酸は平均LDLコレステロール値を19.2 mg/dL低下させ、これはベースラインからの−16.5%の変化に相当しました。
ベムペド酸は一日1回180mg1錠を服用します。
以下に通常用いられる高コレステロール治療薬を示します。
| 分類 | LDL | 中性脂肪 | 副作用 | 一般名 |
| スタチン | ↓↓↓ | ↓ | 横紋筋融解症・筋肉痛・肝障害 | プラバスタチン シンバスタチン フルバスタチン アトルバスタチン ビタバスタチン ロスバスタチン |
| 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬 | ↓↓ | ↓ | 消化器症状・肝障害・ワルファリンと併用注意 | エゼチミブ |
| ニコチン酸誘導体 | ↓ | ↓↓ | 顔面紅潮・頭痛・肝障害 | ニコチン酸トコフェロール |
| ATPクエン酸リアーゼ阻害剤 | ↓↓ | ― | 痛風 | ベムペド酸 |
動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版 日本動脈硬化学会
Ray KK, Bays HE, Catapano AL, Lalwani ND, Bloedon LT, Sterling LR, Robinson PL, Ballantyne CM; CLEAR Harmony Trial. Safety and Efficacy of Bempedoic Acid to Reduce LDL Cholesterol. N Engl J Med. 2019 Mar 14;380(11):1022-1032. doi: 10.1056/NEJMoa1803917. PMID: 30865796.
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