新しい睡眠薬（オレキシン受容体拮抗薬DORA）が使用できるようになりました：ボルノレキサント（ボルズィ）

ボルノレキサントは、オキサアジナン環を導入することで脂溶性を低減し、消失半減期（T1/2）を短くした薬剤です。健康成人における最高血中濃度到達時間（Tmax）は0.5時間、T1/2は2.13時間と速やかな吸収と短い半減期が特徴です（下記の表参照）。これまで他のオレキシン受容体拮抗薬（DORA）では翌朝の持ち越し効果を感じる方にはよい適応になります。一方、早く目が覚めてしまうなど十分な効果が期待できない方がいるかも知れません。睡眠薬は個人差が大きな薬ですので、自分に合った薬を見つけるのがよいでしょう。

オレキシン受容体拮抗薬 (DORA)は、ボルノレキサント（ボルズィ）を含めて現在4種類ありますが、すべて主要な代謝酵素はCYP3A4に依存しています。現在使用されている医薬品の半分以上はこのCYP3A4によって代謝されると言われています。CYP3A4は肝臓に最も多く含まれます。小腸にも含まれ、経口で摂取した薬剤が体内に吸収される前に代謝を受けます（当ブログ、グレープフルーツと薬の飲み合わせを参照）。

睡眠薬の場合は特に、CYP3A4を強く阻害する薬剤と一緒に服用した場合、大きな問題をきたす可能性があります。オレキシン受容体拮抗薬(DORA)の血中濃度が上昇し、過度の鎮静、傾眠、ふらつきなどの副作用が増強されるリスクがあるためです。抗真菌薬（足白癬など）のイトラコナゾールなど、抗生物質のクラリスロマイシン、新型コロナウイルス治療薬であるエンシトレルビル（ゾコーバ）との併用は禁忌となっています。

各種オレキシン受容体拮抗薬の特徴

Tmax　薬を飲んでから血中濃度が最も高くなるまでの時間

T1/2　血中濃度が最も高くなってから半減するのにかかる時間

やまほたるぶくろ（北岳　草すべり　8月）